• Ravintola Juuri. Kuva: Riitta Sourander
  • Ravintola Juuri. Kuva: Riitta Sourander
  • Juuren puoti. Kuva: Riitta Sourander
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食とドリンク

レストラン・ユーリ(Ravintola Juuri)のオーナー、イリヤ・ビョルス(Ilja Björs)は生粋のヘルシンキっ子で、デザイン・ディストリクトの設立会員でもあります。ですからこの地区のことを自分の裏庭のようによく知っています。イリヤにとって食べ物は口に入れる物という以上の意味を持っています。彼はフィンランドの食文化と食材を刷新することに力を注いできました。その場はヘルシンキ・フェスティバルであったり、ヘルットニエミにあるマリメッコ本社の食堂であったりします。イリヤは食を求めてヘルシンキを訪れる旅行者のガイドをしていたこともあります。「ヘルシンキには食にまつわる面白い話がたくさんあるんですよ」

2004年にオープンしたレストラン・ユーリのコンセプトは、現在でも変わっていません。「地元の食材で作るフィンランド料理。でも普通のフィンランド料理でなく、ひと味違う、工夫を凝らしたグルメ料理」イリヤとその仲間は「フィンランドのタパス」でお客をもてなすことによって、北欧の食の哲学を推進する先駆けの地位を築きました。ユーリのレシピをまとめた本が2014年に出版されました。

良いアイデアは本物であり、コピーもできるし、永続するものだと、イリヤは考えています。ユーリはまさしくその好例なのです。イリヤはレストランのほかに、ワインバー、食堂を経営しています。このすべてに共通するのはフィンランド産の食材とそれらに忠誠を誓うことなのです。

フィンランドの収穫期は短いけれど、イリヤの一番好きなシーズンです。「新鮮な地元食材で作った料理を楽しめる日の長い、光に溢れた夏が大好きです。屋外のサマーキッチンで調理した旬のパイクパーチ、新じゃが、アンズダケ、歯ごたえのあるアスパラに勝るものはないですよね」

ヘルシンキ郊外の島で地元の食材を料理しながら夏を楽しむイリヤも、なかなか自分で森に行く時間が取れないといいます。「すぐ近くの森にはベリー、キノコはもちろん、トウヒの新芽などの野生のハーブなど取りきれないほどの恵みがあふれています。本当はもっと自然のことを学んで、子どもたちにも自然の恵みを食すること伝えていきたいのですが」ヘルシンキ市は2011年以来、市有地に生える果物の木やベリーの灌木を記入した地図をネット上に公開しています。Facebookの地元のリンゴ市場も人気です。これは庭の木になった食べきれないリンゴをネット経由でおすそ分けするコミュニティーです。デザイン・ディストリクトにも秋になるとお客さんにリンゴを無料でおすそ分けするショップが沢山あります。

レストラン・ユーリはデザイン・ディストリクトの中心となるコルケアヴオレンカトゥ通りにあり、SPISやPastisなどの新しいレストランと共に国際的にもそん色ない食の一角を形成しています。コルケアヴオレンカトゥ通りにはそのほか居心地のよさそうなカフェや食料品店、レストラン、キッチングッズの店もあり、食に興味のある人々のニーズを満たします。

イリヤはヘルシンキの食文化を担っているのは小さな食料品店、屋内市場、魚などの地元の食材だと考えています。ヘルシンキはヨーロッパのどの都市もそうであるように、街角の小さな酒場が地元の飲酒文化を作ってきました。街区広場にはヘルシンキの地ビールを提供するレストランもオープンしました。フィンランド各地の小規模生産者のビールはお店でも買えますし、バーやレストラン、フードイベントやビールの味見会などでも楽しめます。イーリヤの経営するワインバー・ラトゥバでもヘルシンキ周辺の小規模生産者のビールやシードルが味わえます。また、北国の食材がインスピレーションを与えたイラクサ、白樺の葉、ビーツを混ぜたドリンクもあります。

イリヤにとって食事とお酒は切り離せないものです。彼が望むのはヘルシンキに小さなワインショップができることです。もう一つの願いは、夏の白夜の時期にレストランやバーのテラスがもう少し遅くまでオープンしていられるように規制緩和がなされることです。外で日没の時間をゆっくりすごすのは夏ならではの楽しみですから。「ワイングラスを傾けながら街角の酒場のテラスで神秘的な8月の夜を過ごすのは最高ですよ」

イーリヤは70年代の自宅の台所を懐かしく思い出します。彼にとってはそれもヘルシンキの食文化の一部だからです。「我が家ではいつもシンプルだけれども汚染されていない新鮮な食材でつくった、奇をてらうことのない家庭料理を食べていました」彼の好物のひとつはミートボールです。それはもともとスウェーデン料理だという人が多いなか、イリヤはフィンランド料理であると確信しています。でもたったひとつ違いがあります。「フィンランドでは素朴にひき肉にパン粉と卵を入れて作るけれど、スウェーデンでは生クリームも入れるんですよ」彼にとって食事とは日常であり、永遠に美味しく、新鮮、かつエコロジカルな物なのです。このコンセプトは未来にも必ず通用するでしょう。

www.designdistrict.fi

文: Milla Visuri